社会医療法人社団三思会 東名厚木病院 認定第GA50-5号 地域医療支援病院・臨床研修指定病院

神奈川県がん診療連携指定病院

病院紹介

身体的拘束最小化のための指針

1.身体的拘束最小化に関する考え方

身体的拘束は、患者の生活の自由を制限することであり、患者の尊厳ある生活を阻むものである。当院では、患者の尊厳と主体性を尊重し、拘束を安易に正当化することなく、職員一人ひとりが身体的・社会的・精神的弊害を理解し、緊急やむを得ない場合を除き、原則として身体的拘束を実施しない。

用語の定義

行動制限:薬剤や道具などを用いて患者の自由を制限すること全般をいう。
身体的拘束:この指針でいう身体的拘束は、抑制帯など患者の身体または衣類に触れる何らかの用具を使用して、一時的に当該患者の身体を拘束してその運動を抑制する行動の制限をいう。

2.日常ケアにおける基本方針

身体的拘束を行う必要性を生じさせないために、日常的に以下のことに取り組む。

  1. (1) 身体的拘束を誘発する原因を探り、除去する。必ずその人なりの理由や原因があり、ケアする側の関わり方や環境に問題があることも少なくない。そのため、その人なりの理由や原因を徹底的に探り、除去するケアが必要である。
  2. (2) 基本的ケアを徹底する。以下の基本的なケアを十分に行い、生活のリズムを整える。
    • ①起きる
      人間は座っているとき、重力が上からかかることにより覚醒する。目が開き、耳が聞こえ、自分の周囲で起っていることがわかるようになる。これは臥床して天井をみていたのではわからない。起きることを助けることは人間らしさを追求する第一歩である。
    • ②食べる
      人間にとって食べることは楽しみや生きがいであり、脱水予防、感染予防にもなり、点滴や経管栄養が不要になる。食べることはケアの基本である。
    • ③排泄する
      なるべくトイレで排泄してもらうことを基本に考える。オムツを使用している人については、随時交換が重要である。オムツに排泄物がついたままになっていると気持ちが悪く、「オムツいじり」などの行為につながることになる。
    • ④清潔にする
      きちんと風呂に入ることが基本である。皮膚が不潔になることがかゆみの原因になり、そのために大声を出したり、夜眠れずに不穏になったりすることになる。皮膚をきれいにしておけば、本人も快適になり、また、周囲も世話をしやすくなり、人間関係も良好になる。
    • ⑤活動する(アクティビティー)
      その人の状態や生活歴に合ったよい刺激を提供することが重要である。具体的には、音楽、工芸、園芸、ゲーム、体操、家事、ペット、テレビなどが考えられる。言葉によるよい刺激もあれば、言葉以外の刺激もあるが、いずれにせよ、その人らしさを追求するうえで、心地よい刺激が必要である。
  3. (3) 「より良いケア」の実現をめざす
    身体的拘束廃止を実現していく取り組みは、院内におけるケア全体の向上や生活環境の改善のきっかけとなりうる。「身体拘束廃止」を最終ゴールとせず、身体的拘束を廃止していく過程で提起された様々な課題を真摯に受け止め、よりよいケアの実現に取り組んでいくことが期待される。(「身体拘束ゼロへの手引き」一部改変)
  4. (4) 基本的姿勢
    • 患者主体の行動、尊厳ある生活に努める。
    • 言葉や対応などで、患者等の精神的な自由を妨げないように努める。
    • 患者等の思いをくみとり、患者等の意向に沿ったサービスを提供し、他職種協働で個々に応じた丁寧な対応を行う。
    • 患者等の安全を確保する観点から、患者等の自由(身体的・精神的)に安楽を妨げるような行為を行わない。
    • 「やむを得ない」と安易に身体的拘束に該当する行為を行っていないか、常に振り返りながら患者等に主体的な入院生活を過ごせるように努める。
    • 常に代替的な方法を考え、身体的拘束をする場合は極めて限定的にする。

3.身体的拘束最小化チームの設置

身体的拘束の最小化に向けて身体的拘束最小化チームを設置する。

  1. (1) 目的
    • 院内での身体的拘束最小化に向けて現状把握及び改善についての検討を行う。
    • 適切な身体的拘束であるか評価を行う。
    • 身体的拘束最小化に関する職員全体への啓発・指導を行う。
  2. (2) 身体的拘束最小化チームの構成員医師、看護師、薬剤師、リハビリ職このチームの責任者は、医師とする。
  3. (3) 身体的拘束最小化チーム会議の開催定期開催(1回/月)。ただし、必要時には随時開催する。
  4. (4) 活動内容
    • ①身体的拘束最小化のための指針、身体的拘束運用マニュアルの見直し
    • ②身体的拘束の実施状況の把握、改善についての検討
    • ③身体的拘束湯の代替案、拘束解除に向けての評価・検討
    • ④病棟ラウンド
    • ⑤職員全体への教育、研修会(2回/年)の企画・実施
  5. (5) 活動内容
    • ①身体的拘束最小化のための指針、身体的拘束運用マニュアルの見直し
    • ②身体的拘束の実施状況の把握、改善についての検討
    • ③身体的拘束湯の代替案、拘束解除に向けての評価・検討
    • ④病棟ラウンド
    • ⑤職員全体への教育、研修会(2回/年)の企画・実施

4.緊急やむを得ず身体的拘束を行う場合の対応

  1.  (1) 身体的拘束禁止の基準
    医療サービス提供にあたって、患者の生命または身体を保護するため、緊急やむを得ない場合を除き、身体的拘束、その他の患者等の行動を制限する行為を禁止する。「緊急やむを得ない」とは
    • 1)「緊急やむを得ない」場合に該当するか検討すべき患者の状態・背景に該当
    • 2)「緊急やむを得ない場合の例外三原則」(切迫性、非代替性、一時性)の全てを満たし、かつ、「日常ケア」のみでは十分に患者の生命や身体を保護できないこと
  2.  (2) 「緊急やむを得ない」場合に該当するか検討すべき患者の状態・背景
    • ①治療上必要な医療行為の継続が困難と判断されるとき(チューブ類・ドレーン類・カテーテル・点滴ルートの自己抜去による危険)
    • ②患者本人の生命が危険にさらされる可能性が高く、保護を必要とするとき
    • ③一人で行動することで、転倒・転落の危険性が高いと判断されるとき
    • ④他の患者の生命が危険と判断される行為があるとき
    • ⑤身体的拘束を行う以外に代替する看護方法がないと判断されるとき
    • ⑥医療スタッフの生命が危険と判断される行為があるとき
  3. (3) 緊急・やむを得ない場合の例外三原則
    患者個々の、心身の状況を勘案し、疾病・障害を理解した上で身体的拘束を行わないケアの提供をすることが原則となる。例外的に以下の3つの要素のすべてを満たす状態にある場合は、必要最低限の身体的拘束を行うことがある。
    • ①切迫性:患者本人または、他の患者等の生命または身体が危険にさらされる可能性があり、緊急性が著しく高いこと。
    • ②非代替性:身体的拘束その他の行動制限を行う以外に代替する方法がないこと。
    • ③一時性:身体的拘束その他の行動制限が一時的なものであること。一時性には身体的拘束が必要な期間、その期間中で解除できる時間などを記載する。
    *身体的拘束を行う場合には、以上の三つの要件をすべて満たすことが必要である。
    • 例)転倒・転落のリスク(体幹抑制)
      切迫性:抗凝固薬・抗血小板薬を服用中であり、転倒による出血のリスクがある
      非代替性:生活リズムの調整や排泄パターンの把握を行ない、患者のニーズを満たす患者の理解度に合わせた説明と対応(ナースコール・イラストなど)
      一時性:食事の際には車椅子乗車をし、体幹抑制を毎食30分程度解除する
    • 例)胃管自己抜去(ミトン)
      切迫性:経管栄養中の胃管自己抜去により、誤嚥のリスクがある
      非代替性:嚥下機能の再評価、栄養ルートの検討
      一時性:経管栄養中のみ実施

5.身体的拘束に該当する行為

  1. ①徘徊しないように、車いすやいす、ベッドに体幹や四肢をひも等で縛る。
  2. ②転落しないように、ベッドに体幹や四肢をひも等で縛る。
  3. ③自分で降りられないように、ベッドを柵(サイドレール)で囲む。
  4. ④点滴・経管栄養等のチューブを抜かないように、四肢をひも等で縛る。
  5. ⑤点滴・経管栄養等のチューブを抜かないように、または皮膚をかきむしらないように、手指の機能を制限するミトン型の手袋等をつける。
  6. ⑥車いすやいすからずり落ちたり、立ち上がったりしないように、Y字型拘束帯や腰ベルト、車いすテーブルをつける。
  7. ⑦立ち上がる能力のある人の立ち上がりを妨げるようないすを使用する。
  8. ⑧脱衣やおむつはずしを制限するために、介護衣(つなぎ服)を着せる。
  9. ⑨他人への迷惑行為を防ぐために、ベッドなどに体幹や四肢をひも等で縛る。
  10. ⑩行動を落ち着かせるために、向精神薬を過剰に服用させる。
  11. ⑪自分の意思で開けることのできない居室等に隔離する。

―身体拘束ゼロへの手引き-

6.当院で身体的拘束に該当する行為

  1. (1) 車椅子乗車時安全帯を使用する
  2. (2) ベッドの四方を柵や壁などで囲む
  3. (3) 手・足もしくは体幹等を安全帯で固定する
  4. (4) 手袋(ミトン)等を着用する
  5. (5) 介護衣(つなぎ服)を着用する
  6. (6) 行動制限となる薬剤の過剰投与

7.当院で身体的拘束に該当しない行為

  1. (1) 転倒・転落時の受傷を最小限とするための衝撃吸収マットを使用する
  2. (2) 転倒転落防止対策として離床センサーを使用する
    *当院では、離床センサーは安全目的として転倒転落回避器具として考え、身体拘束器具の対象としない。
  3. (3) 車椅子で自力体位保持困難な患者の姿勢保持のための安全帯
  4. (4) 検査・処置時の安静保持、検査移送時などの安全な移動のために安全帯を使用し身体固定する
  5. (5) 手術時に同一体位を保持するために安全帯を使用し身体固定する
  6. (6) 構造上4点柵となり得るベッド(ICUベッド)を使用する
  7. (7) 固定・牽引が治療上必要で、固定・牽引目的での身体固定・牽引器具を使用する
  8. (8) 検査、治療上の安全担保、苦痛の緩和を目的とした鎮静剤の使用

8.鎮静を目的とした薬物の適正使用について

  • 必要に応じ、医師に相談し、不眠時や不穏時の薬剤使用の指示を仰ぎ、適正使用に努める。
  • 治療や検査において、それぞれが安全に行なわれるように、使用する鎮静剤の種類や使用量などに注意する。
  • 向精神薬等を使用する際は、薬物の使用は必要最低限にとどめ、薬物を使用した場合には作用・副作用の観察を十分に行うとともに、基本的ケアを継続し、早期に症状が改善するように努める。
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