東名厚木病院

神奈川県がん診療連携指定病院

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コラム

乳房再建術とは

教えて!とうめい先生

2025年10月28日

乳がんの治療で乳房切除は大きな心身の負担となりますが、治療後の生活を前向きに過ごす選択肢のひとつとして、乳房の再建があります。乳房再建術を行う形成外科 高梨医師にお話しをうかがいました。

 

1.見た目の回復以外の目的も

乳房再建は、乳がん治療後の生活を充実させ、患者さんが自分らしく生きることを目的としています。見た目の回復を図るだけでなく、喪失感や自己肯定感の低下を和らげ、胸パッドのズレによる不自由さ、左右差による肩こりなど、日常生活の不便も改善されます。

 

2.再建方法とその特徴

再建方法は、大きく「自分の体の一部を使う方法(自家組織)」と「人工物を使う方法」に分かれます。自家組織は長期的満足度が高い一方、採取部位に傷が残る、手術が複雑になるといった課題があります。人工物ではシリコンインプラントを用いることで、身体への負担は少ないものの、感染や破損などのリスクがあり、定期的な検査が必要になります。それぞれの特徴を理解し、患者さんの状態に合わせて選択をします。

 

3.誰でも受けられる?

お体の状態やがんの進行度、治療の内容をふまえて、再建のタイミングや方法を選ぶことができます。次のような方が、乳房再建の適応となる可能性があります。①手術で乳房を失ったことによる見た目や心理的な負担を和らげたいと希望される方。②乳がんの手術後、がんの治療(抗がん剤・放射線治療など)が落ち着いている方。③がんの進行が落ち着いており、再建手術を受ける体力がある方。④予防的乳房切除を受けた方(遺伝性乳がんなど)。必要に応じて乳腺外科から紹介になることや、お話しを聞きたいというだけでも相談可能です。

 

4.再建後の変化

再建後には「洋服が自然に着られる」「温泉で人目が気にならない」「自信を取り戻せた」などの声がある一方、感覚の鈍さや違和感が残ることもあります。生活面では徐々に普段通りに戻れますが、定期的な通院と心のケアも重要です。

 

5.些細なことでも相談を

当院では年齢を問わず希望される方に、大学病院と同等の選択肢と高水準の再建を提供できる体制を整えています。  乳がんと診断された直後は再建まで考えられない方も多いですが、私たちは患者さんの気持ちに寄り添い、納得のいく選択ができるようサポートします。乳房再建は「見た目の再建」であると同時に「心の再建」でもあります。どんな小さな疑問や不安もご相談ください。わからないことや不安なことをひとつずつ整理しながら、一緒に最適な方法を考えていきます。

 

形成外科 髙梨 遼

日本形成外科学会認定 形成外科専門医/がん専門修練医(形成外科)修了/ がん診療に携わる医師に対する緩和ケア研修修了/乳房再建用エキスパンダー/インプラント治療責任医師

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