放射線治療の今
放射線治療をご存知ですか?放射線治療は、がん細胞の増殖を抑えたり死滅させたりすることを目的とした治療法です。手術や薬物療法(抗がん剤)と並んでがん治療の「三本柱」の一つなのですが、世間一般にはそれほど認知されていません。本日は、そんな認知度の低い放射線治療について簡単に説明します。
1.基本的な仕組み

放射線治療の根本的な原理は、細胞の設計図であるDNAを破壊することにあります。 放射線が細胞内のDNAを直接攻撃し切断することを直接作用といいます。それに対して細胞内の水分と放射線が反応して「活性酸素」が発生し、その活性酸素がDNAを攻撃することを間接作用といいます。実際の放射線治療は主に間接作用によってDNAにダメージを与えます。DNAが激しく損傷すると、細胞は分裂して増えることができなくなり、やがて死滅します。ここで重要なのが、「がん細胞は正常細胞よりもダメージの修復能力が低い」という点です。正常細胞も一時的にダメージを受けますが、一定時間が経過すると自己修復します。この修復能力の差を利用して、数回に分けて照射することで、正常組織を守りつつがん細胞だけを効率的にやっつけることができるのです。
2.長所と短所
放射線治療の最大の長所は切らずに治せるため、臓器の形や機能を温存できることです。例えば喉頭がんでは手術をすれば発声機能は失われますが、放射線治療では残すことができます。一方、短所である副作用は照射された部位に起こる「局所的な症状」が主です。皮膚の炎症や倦怠感、照射部位に近い臓器の炎症(肺炎や腸炎など)がありますが、技術の進歩により以前よりも大幅に軽減されています。高齢者や持病がある方でも体への負担が少なく、通院で治療が可能です。
3.先端医療

現代の放射線治療は、ターゲットを正確に射抜くための高度なテクノロジーに支えられています。IGRT(画像誘導放射線治療)は、「照射直前に位置をミリ単位で修正する」技術です。呼吸や内臓の動きによる日々の位置のずれを修正できるため、狙った場所に確実に照射することができます。

IMRT(強度変調放射線治療)は、「がんの形に合わせて強弱をつける」技術です。がんが複雑な形をしていてもそれに沿って放射線を集中でき、隣り合う正常組織へのダメージを最小限におさえることができます。

STI(定位放射線照射)は、「小さな標的にピンポイントで多くの線量を当てる」技術です。短期間で治療が終了し、隣り合う正常組織へのダメージを極めて小さくおさえることができます。東名厚木病院ではエレクタ社のシナジーという治療機器を導入しており、上記の先端治療を行うことができます。
4.おわりに
放射線治療は「細胞の再生能力の差」という生物学的な弱点を突き「ミリ単位の精密な照射」という工学的な技術でがんに挑む治療法です。単にがんを叩く物理的な攻撃ではなく、生命の仕組みを巧みに利用した、非常に合理的で体への優しさを追求した治療なのです。2人に1人ががんになる時代、東名厚木病院放射線治療科はみなさまのがん治療に貢献できるよう、より一層努力してまいります。
東名厚木病院 放射線治療科 岡部 尚行
日本医学放射線学会認定 放射線科専門医/日本医学放射線学会研修指導者 日本放射線腫瘍学会/
日本医学放射線学会共同認定 放射線治療専門医/日本核医学会認定 PET核医学認定医





