乳腺外科

乳腺に関する全てのお悩みに対応いたします
当科は年間100件近くの乳がん手術を行っており、県央西部・厚木地区における乳がん治療の中心的役割を果たしています。近年は形成外科と協力して乳房再建に力をいれており、特に腹部の脂肪による自家組織の再建(DIEP法)は高い評価を得ています。また、薬物療法、放射線治療による集学的な治療を行うことが可能です。
症状がある方、市の乳がん検診や人間ドックで異常を指摘された方は、まずはとうめい厚木クリニックを受診してください。紹介状のない患者さんでもとうめい厚木クリニックを受診することが可能です。また、厚木市や周辺自治体の乳がん検診を受けることができます。詳しくは各自治体からの案内をご確認ください。
乳腺腫瘍の診断
マンモグラフィ
乳腺の検査の基本になります。乳房を圧迫しレントゲン撮影するため、撮影時に多少の痛みを伴います。当院では2019年にトモシンセシス撮影(3Dマンモグラフィ)を行える機種を導入し、さらに正確な診断ができるようになっております。検査は女性の検査技師が行います。
エコー(超音波)検査
乳房にゼリーを塗り、プローベをあてて検査します。痛みは伴いません。腫瘍の性状や大きさを精査することに適しています。マンモグラフィと同様にエコーは女性の検査技師が行います。
病理検査
乳がんが疑われる患者さんには針生検を行い、顕微鏡での診断を行います。場合によっては吸引式針生検(マンモトーム生検)や穿刺吸引細胞診も行うこともあります。
乳がんの治療について
乳がんは女性のがんでは最も多く、他のがんと比較して若い年齢層の患者さんが多いのが特徴です。乳がんの治療は非常に複雑であり、手術のみで終わることはほとんどありません。放射線治療、薬物療法(化学療法、分子標的治療薬、ホルモン療法)の組み合わせによる集学的治療を行います。当院は神奈川県がん診療連携指定病院の認定を受け、多くの乳がんの患者さんに治療を提供しています。不明な点があれば担当医にご相談ください。
手術
腫瘍の大きさや広がり、患者さんの希望も考慮して術式を決定します。腫瘍が小さめの患者様には乳房温存手術(乳房部分切除)をおすすめしています。リンパ節転移がある患者様には腋窩リンパ節郭清を必要としますが、臨床的にリンパ節転移がないと思われる患者さんにはセンチネルリンパ節生検を行い、なるべく体の負担にならないような手術をおこなっています。入院期間は7~10日程度です。
近年、乳房全摘後に再建手術を希望される方も増えてきました。切除と同時に大胸筋下にエキスパンダーを入れ、半年~1年後にシリコンインプラントや自家組織に置き換えます。当院では腹部の脂肪による遊離皮弁再建(DIEP法)が多く行われており、高い評価を得ています。乳房再建は形成外科が中心となって行われます。
放射線治療
温存手術(乳房部分切除)を行った場合は手術後の放射線治療が必須となります。放射線治療は手術後、約1か月経過した頃から、ほぼ毎日(土日を除く)4~6週間かけて行います。全切除した場合でも、リンパ節転移を多く認められる場合も照射を行っています。東名厚木病院は2017年に最新型の放射線治療装置を導入しており、専門の放射線治療医が診療にあたります。
薬物療法
乳がんはタイプや進行度に応じて、化学療法(抗がん剤)や分子標的薬、ホルモン療法を行います。化学療法は専門の看護師・薬剤師などのスタッフを有する外来化学療法センターで行います。化学療法には副作用を伴いますが、現在では化学療法に伴う多くの副作用をいろいろな薬を併用することで抑えることができます。仕事をしながらの化学療法も不可能ではありません。近年は手術の前に化学療法を行う場合も多くなってきました。術前・術後の化学療法の場合は約3~6か月間、3週毎に点滴で行います。
むくみ・リンパ浮腫ケア外来
乳がんの手術を行ってからしばらくすると、腕のむくみなどの後遺症がでることがあります。
当院ではリンパ浮腫のケア外来を設けておりますので、ご希望の場合は担当医にご相談ください。
転移再発乳がんに対する治療
臓器への転移・再発を来した患者さんの治療も積極的に行っております。近年は新しい治療薬が毎年のように承認されており、当院でも積極的に採用しております。 最近はがんゲノム医療も進歩し、患者さんそれぞれの「個別医療」も行われるようになりました。ゲノム医療拠点病院と協力して遺伝子パネル検査も行うようにしています。また、家族性乳癌の原因であるBRCA遺伝子変異の検査と、BRCA遺伝子変異陽性者に対する薬物治療も行っております。
緩和ケア
東名厚木病院は県央地区で唯一の緩和ケア病棟を有しております。東名厚木病院の緩和ケア病棟は全室個室で、医師をはじめ様々な専門家が、精神的および肉体的苦痛を取り除くためのお手伝いをいたします。
セカンドオピニオン
乳がん治療はエビデンス(臨床試験などによって示された科学的根拠)をもとに標準治療が確立されており、どこの病院でも基本的な治療方針に大きな違いはありません。しかし一部の病態では、治療方針に明確な基準がなく、病院によって勧められる治療方針が異なるケースも存在します。
東名厚木病院は神奈川県がん診療連携指定病院として、セカンドオピニオン外来を設けております。セカンドオピニオン外来は、「第2の意見」を聞く場として、患者さんご自身が納得のいく治療方法を選択するのに役立てていただくことを目的としております。他院に通院中で東名厚木病院のセカンドオピニオンをご希望の場合は「セカンドオピニオン外来のご案内」をご確認ください。
また東名厚木病院/とうめい厚木クリニックで乳がん治療を受けている患者様で、他院のセカンドオピニオンを希望される場合は担当医などにお申し付けください。
実績
治療
2023年 | 2024年 | |
---|---|---|
総手術数 | 97 | 93 |
乳房全切除術 (うち1次再建を伴うもの) |
60 (10) |
55 (11) |
乳房部分切除術 | 31 | 29 |
良性腫瘍、その他 | 7 | 12 |
*両側乳がん症例の乳房切除は左右別の件数に含む
医師紹介
常勤医師
日野 浩司(ひの こうじ)法人本部長

- 大学
- 1987年 富山医科薬科大学(現富山大学)卒
- 資格
-
- 日本外科学会認定 外科専門医・指導医
- 日本乳癌学会認定 乳腺認定医
- 日本消化器外科学会認定 消化器外科専門医
- オンコプラスティックサージェリー学会認定 乳房再建実施医師
- 日本乳がん検診精度管理中央機構認定 検診マンモグラフィ読影認定医
- 日本医師会認定 認定産業医
- 日本総合診療学会認定 総合診療医
- 日本病院会認定 病院総合医
- 専門
- 乳腺外科、化学療法、緩和ケア、一般消化器外科、総合診療、臨床研修指導
- 一言
- 悩みよろず相談屋。皆様の様々な思いに対応できればと考えております。
鎌田 順道(かまた ありみち)診療科長

- 大学
- 2009年 山梨大学医学部卒
- 資格
-
- 日本外科学会認定 外科専門医・指導医
- 日本乳癌学会認定 乳腺専門医
- 日本消化器外科学会認定 消化器外科専門医・指導医
- オンコプラスティックサージェリー学会認定 乳房再建実施医師・責任医師
- 日本遺伝性乳癌卵巣癌総合診療制度機構 遺伝性乳癌卵巣癌症候群(HBOC)教育セミナー修了医
- 日本乳がん検診精度管理中央機構認定 検診マンモグラフィ読影認定医
- 日本乳がん検診精度管理中央機構認定 乳がん検診超音波検査実施・判定医
- 日本がん治療認定医機構認定 がん治療認定医
- 日本消化器外科学会認定 消化器がん外科治療認定医
- 専門
- 乳腺外科、一般消化器外科、化学療法、一般内科
- 一言
- 乳がんの治療はとても複雑ですが、わかりやすい説明をいたします。
患者さんそれぞれに最適な治療を提供します。
臨床研究等
論文発表
- A Kamata, K Hino, K Tazawa, K Kawai, K Arai, A Nakano
- Complete recovery from pseudocirrhosis caused by chemotherapy for diffuse liver metastases of breast cancer
International Cancer Conference Journal, Volume 14, publish online, 2025 - A Kamata, K Hino, A Matsuda, K Kamiyama, Y Takasaka, K Tazawa
- Treatment of HER2-positive cutaneous apocrine carcinoma of the axilla
International Cancer Conference Journal, Volume 13, pages 348–352, 2024 - A Kamata, T miyamae,M Koizumi, K Hino et.al
- Using Computed Tomography-Lymphography for Mapping of Sentinel Lymph Nodes in Patients with Breast Cancer
Journal of Clinical Imaging Science 2021・11(43), doi: 10.25259/JCIS_33_2021 - A kamata, K Hino, K Kamiyama, Y Takasaka
- Very Late Recurrence in Breast Cancer: Is Breast Cancer a Chronic Disease?
Cureus 14(3): e22804. doi: 10.7759/cureus.22804,2022 - 牛山 浅美(東名厚木病院看護部), 中 正剛, 鎌田 順道, 石川 征之, 小島 淳夫, 田澤 賢一, 志村 信一郎
- 弾性着衣の補助具「スリップ」「ゴム手袋」の種類における摩擦力と嗜好性の検討
日本フットケア・足病医学会誌5巻 Page110-116(2024.05) - 牛山 浅美(東名厚木病院看護部),小島 淳夫, 鎌田 順道,日野 浩司,神山 公希,高坂 佳宏,中 正剛,野村 直樹
- 抗がん剤による抹消神経障害に対する圧迫療法の効果に関する検討
静脈学32巻1号 Page127-134(2021.08)
学会発表
2025年
- 鎌田 順道, 日野 浩司, 田澤 賢一, 牛山 浅美, 大村 哲也, 島多 勝夫, 山下 巌
- トラスツズマブデルクステカンによる間質性肺炎症例の検討と対策
第33回日本乳癌学会総会;新宿区:2025.7.10 - 牛山 浅美(東名厚木病院看護部), 鎌田 順道, 日野 浩司, 田澤 賢一, 山下 巌, 小島 淳夫,野村 直樹, 志村 信一郎
- 上肢リンパ浮腫における熱感と腫脹の分布と影響因子に関する検討
第33回日本乳癌学会総会;新宿区:2025.7.10
2024年
- 鎌田 順道, 日野 浩司, 川井 貴美子, 神山 公希, 高坂 佳宏, 田澤 賢一, 大村 哲也, 島多 勝夫, 山下 巌
- 化学療法が著効することで偽性肝硬変へと変化した乳癌多発肝転移の1例
第32回日本乳癌学会総会;仙台市:2024.7.11 - 松田亜莉沙(東名厚木病院薬剤科), 相場裕美子, 吉岡我佳命, 鎌田順道, 田澤賢一, 日野浩司
- FEC(60/100)療法における血管障害のリスク因子に関する検討
日本臨床腫瘍薬学会学術大会2024;神戸市:2024.3.2 - 牛山 浅美(東名厚木病院看護部), 中 正剛, 小島 淳夫, 田澤 賢一, 鎌田 順道, 志村 信一郎
- 弾力性包帯の形態的および物理的性質に関する検討
第44回日本静脈学会総会;軽井沢町:2024.6.13 - 鎌田 順道, 日野 浩司
- 乳癌のチーム医療
DS webセミナー がん診療のトータルケア;オンライン:2024.3.26 - 鎌田 順道, 日野 浩司
- 乳癌診療ガイドラインによるT-Dxdの位置づけについて
DS webセミナー 乳がん治療連携最前線;オンライン:2024.3.6 - 鎌田 順道
- TNBC治療におけるKEYNOTE-522~導入時のICの工夫~
MSD webセミナー TNBC web Seminar:オンライン:2024.12.3 - 松田亜莉沙(東名厚木病院薬剤部) , 鎌田 順道, 日野 浩司
- がん化学療法における安全対策の現状と課題
Chugai webセミナー がん化学療法の安全対策を考える会:大和市:2024.11.26
2023年
- 鎌田 順道,日野 浩司,田澤 賢一,神山 公希,高坂 佳宏,馬場 逸人,小檜山 亮介,渡邉 奈月,島多 勝夫,山下 巌
- 脳転移を伴った転移再発乳癌症例の検討
第31回日本乳癌学会学術総会;横浜市:2023.7.1 - 鎌田 順道,日野 浩司,神山 公希,高坂 佳宏,田澤 賢一,小島 淳夫,島多 勝夫,山下 巌
- 腋窩に発生したHER2陽性皮膚アポクリン癌の1例
第85回日本臨床外科学会総会;岡山市:2023.11.16 - 松田 亜莉沙(東名厚木病院薬剤部),鎌田 順道,日野 浩司
- ケモ室における課題と効率的な運用を考える
Breast cancer symposiun Chugai 2023;厚木市:2023.11.16 - 牛山 浅美(東名厚木病院看護部),中 正剛,鎌田 順道,石川 征之,志村 信一郎
- 弾性着衣の補助具「スリップ・ゴム手袋」の種類における摩擦力と嗜好性の検討
第3回日本フットケア・足病医学会年次学術集会;奈良市:2023.2.11 - 牛山 浅美(東名厚木病院看護部),中 正剛,小島 淳夫,鎌田 順道,志村 信一郎
- 弾性着衣の摩擦力と物理的性質の関係に関する検討
第43回日本静脈学会総会;松山市:2023.7.7